
静止型プラットフォーム(例:監視カメラ)における多対象追跡(Multi-object Tracking: MOT)は、さまざまなアプローチによって顕著な進展を遂げており、高い性能が実現されている。しかし、ドローンなどの動的プラットフォームにおける従来のMOT手法の有効性は著しく低下する。その原因は、ドローン上でのMOT環境に特有の課題に起因する。具体的には、(1) 対象が画像平面で一般に小さく、ぼやけやすく、頻繁に隠蔽されるため、検出および認識が困難であること、(2) ドローン自身が移動し、対象を異なる視点から観測するため、対象の予測位置および特徴埋め込みの信頼性が低下することである。本論文では、ドローン上でのMOTを対象とした新規手法「DroneMOT」を提案する。まず、ドローンの高速移動を考慮した「Dual-domain Integrated Attention(DIA)」モジュールを導入し、小型・ぼやけ・隠蔽された対象に対するドローンベースの物体検出および特徴埋め込みの精度を向上させる。次に、ドローンと対象の同時移動を考慮した革新的な「Motion-Driven Association(MDA)」戦略を提案する。MDA内では、異なる視点から観測される対象の特徴を適応的に同期する「Adaptive Feature Synchronization(AFS)」技術を導入する。さらに、対象の位置を予測するための「Dual Motion-based Prediction(DMP)」手法を採用し、更新された特徴埋め込みと予測位置を統合することで、対象の関連付けを強化する。VisDrone2019-MOTおよびUAVDTデータセットを用いた包括的な評価により、DroneMOTがドローン上でのMOT領域において、最先端技術と比較して顕著な性能向上を達成することが確認された。