
要約
グラフ畳み込みネットワーク(Graph Convolutional Networks, GCN)は、グラフ上で畳み込み演算を適用するグラフニューラルネットワークの一種である。畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とは異なり、GCNはノード数が変動可能であり、ノードが順序付けられていないグラフ構造に対して推論を実行することを目的として設計されている。本研究では、GCNに関する2つの重要な課題に取り組んだ。すなわち、i) 過剰平滑化(oversmoothing)の問題と、ii) ノード間の関係性特性(すなわち、異質性(heterophily)と同質性(homophily))の活用である。過剰平滑化とは、反復的な特徴の集約処理によって、ノード間の識別能力が低下する現象を指す。異質性とは、異なるクラスに属するノード同士が接続する傾向を、同質性とは、類似したノード同士が接続する傾向を意味する。本研究では、時間的に変化する2つのノード間における情報の方向性のある伝達量を測定する「転送エントロピー(Transfer Entropy, TE)」に基づいた新たな戦略を提案し、これらの課題に対処する方法を提示した。実験の結果、ノードの異質性および次数(degree)情報をノード選択のメカニズムとして用い、特徴に基づくTE計算を組み合わせることで、さまざまなGCNモデルにおいて分類精度が向上することが明らかになった。本モデルは、既存のGCNモデルの分類精度を容易に向上させるために修正可能な柔軟性を有している。一方で、多くのグラフノードに対してTEを計算する場合、著しい計算負荷が伴うというトレードオフがある。