
要約
抗体-抗原結合部位(すなわち、パラトープおよびエピトープ)の正確な予測は、抗体設計において極めて重要である。しかし、従来の手法は単一モーダルデータ(配列または構造)にのみ焦点を当てており、多モーダルデータに内在する補完的情報を無視している。さらに、多くの手法はパラトープとエピトープを別々に予測するため、両者の特異的な空間的相互作用を考慮していない。本論文では、抗体および抗原の配列情報と構造情報を併用することで、多モーダルな対照学習と相互作用情報量推定に基づく新たなパラトープ・エピトープ予測手法、MIPE(Multi-modal contrastive learning and Interaction informativeness estimation-based method for Paratope and Epitope prediction)を提案する。MIPEは、各モーダル内における結合残基と非結合残基の表現を最大化するとともに、単一モーダル表現を効果的な統合表現へと整合させる多モーダル対照学習戦略を実装している。また、空間的相互作用情報を活用するため、抗体と抗原間の推定相互作用行列を計算する相互作用情報量推定機構を導入し、実際の相互作用行列に近似することを可能にしている。広範な実験により、本手法が既存のベースライン手法を上回る性能を発揮することが示された。さらに、アブレーション研究および可視化結果から、MIPEの優れた性能は、多モーダル対照学習によって得られたより優れた表現と、相互作用情報量推定によって捉えられた相互作用パターンの理解に起因していることが明らかになった。