
正規化フロー(Normalizing flow)は、効率的なサンプリングが可能な生成モデルのアプローチである。しかし、フローに基づくモデルには以下の二つの課題がある。第一に、対象となる分布が多様体(manifold)である場合、潜在変数空間の次元とデータ分布の次元の不一致により、モデルの性能が低下する可能性がある。第二に、離散データを扱う場合、フローに基づくモデルは退化した点質量の混合分布に崩壊するリスクがある。これらの問題を回避するために、本研究では、パディング次元のノイズを導入する新しいデクアンタイゼーション手法「PaddingFlow」を提案する。PaddingFlowは、正規化フローの次元をパディングするだけで実装可能であり、実装が容易かつ計算コストが低いため、実用性が高い。さらに、パディング次元のノイズはパディング次元にのみ追加されるため、データ分布を変更せずにデクアンタイゼーションが可能である。既存のデクアンタイゼーション手法では、データ分布の変更を伴う必要があるが、これは性能の低下を引き起こす可能性がある。本手法の有効性は、非条件密度推定の主要なベンチマークにおいて検証された。具体的には、5つのテーブルデータセットと4つの画像データセットを用いた変分自己符号化器(VAE)モデル、および条件付き密度推定としての逆運動学(Inverse Kinematics, IK)実験を対象とした。実験結果から、本研究で提案するPaddingFlowはすべてのタスクにおいて優れた性能を示した。これは、PaddingFlowが多様なタスクに普遍的に適応可能であることを示している。実装コードは以下のURLから公開されている:https://github.com/AdamQLMeng/PaddingFlow。