
知識グラフ(KG)を活用するモデルは、近年、質問応答(QA)タスクにおいて顕著な成果を上げている。現実世界において、KGに含まれる多くの事実には時間制約が存在するため、時系列的知識グラフQA(temporal KGQA)への関心が高まっている。これまでの時系列KGQAモデルは豊富な研究成果を挙げてきたが、依然としていくつかの課題を抱えている。(I)既存モデルは事前学習された言語モデル(PLM)を用いて質問の表現を獲得しているが、PLMはエンティティ情報に注目しやすく、時間制約によるエンティティの遷移を無視する傾向があるため、エンティティの特定の時系列的表現を学習できていない。(II)また、エンティティ間のグラフ構造を重視せず、グラフ内のマルチホップ関係を明示的にモデル化していないため、複雑なマルチホップQAの解決が困難となる。この問題を緩和するため、本研究では新たな「質問補正とマルチホップモデリング(Question Calibration and Multi-Hop Modeling; QC-MHM)」手法を提案する。具体的には、まずKG内の時間制約付き概念と質問を統合することで、質問表現を補正する。次に、GNN(グラフニューラルネットワーク)層を構築し、マルチホップのメッセージパッシングを実現する。最後に、GNNが出力する埋め込み表現と質問表現を統合し、最終的な予測を生成する。実験結果から、提案モデルはベンチマークデータセットにおいて最先端モデルを上回る性能を示した。特に、CronQuestionsデータセットの複雑な質問において、Hits@1とHits@10は、最も優れたベースラインと比較してそれぞれ5.1%、1.2%の絶対的な向上が確認された。さらに、QC-MHMは解釈可能で信頼性の高い予測を生成できる点も特徴である。