
検出器の急速な発展に伴い、バウンディングボックス回帰(Bounding Box Regression: BBR)用の損失関数も継続的に更新・最適化されてきた。しかし、現在のIoUベースのBBR損失関数は、新たな損失項を追加することで収束速度を向上させることに注力しており、IoU損失項自体の限界には十分に注意を払っていない。理論的にはIoU損失はバウンディングボックス回帰の状態を効果的に記述できるが、実用的な場面では、異なる検出器や検出タスクに応じて自己調整できず、汎用性に乏しいという問題がある。以上の観点から、本研究ではまずBBRモデルの特性を分析し、異なる回帰サンプルを識別し、補助的なバウンディングボックスのスケールを変化させることで損失を計算することで、バウンディングボックス回帰のプロセスを効果的に加速できることを明らかにした。具体的には、IoU値が高いサンプルに対しては小さな補助バウンディングボックスを用いて損失を計算することで収束を促進でき、一方でIoU値が低いサンプルには大きな補助バウンディングボックスが適していることが示された。そこで、本研究では補助バウンディングボックスを用いてIoU損失を計算する「Inner-IoU損失」を提案する。異なるデータセットや検出器に適応するため、補助バウンディングボックスのスケールを制御するスケーリング係数比を導入した。さらに、既存のIoUベースの損失関数にInner-IoUを統合し、シミュレーションおよび比較実験を実施した。実験結果から、本研究で提案する手法を用いることで、検出性能がさらなる向上を示した。これにより、Inner-IoU損失の有効性および汎用性が実証された。実装コードは、https://github.com/malagoutou/Inner-IoU にて公開されている。