
要約
ハーケス過程(Hawkes process)は、ソーシャルディフュージョンを含む多くの分野で、順次的なイベントの発生(すなわち発生ダイナミクス)をモデル化するための有力な枠組みとして広く用いられている。現実世界のシナリオでは、イベント間の到着時間間隔は不規則であることが一般的である。しかし、既存のニューラルネットワークベースのハーケス過程モデルは、i)このような複雑な不規則なダイナミクスを捉えることができず、また ii)主に規則的な離散入力を想定したニューラルネットワークに基づいているため、イベントの対数尤度を計算する際にヒューリスティックな手法に頼らざるを得ないという課題を抱えている。このような問題に対処するため、本研究では、神経制御微分方程式(neural controlled differential equation, neural CDE)技術を採用した、制御微分方程式に基づくハーケス過程(HP-CDE)という新たな概念を提案する。この技術は連続的なRNNのアナロジーとして設計されており、HP-CDEはデータを連続的に読み込むため、i)不規則な時系列データを、その不均一な時間空間を保持したまま適切に扱うことが可能となり、かつ ii)対数尤度を正確に計算できるという利点を持つ。さらに、ハーケス過程とニューラルCDEの両方が、複雑な人間の行動ダイナミクスをモデル化することを目的として開発されたものであるため、ニューラルCDEに基づくハーケス過程は、こうしたイベント発生ダイナミクスのモデリングにおいて高い性能を発揮する。4つの実世界データセットを用いた実験の結果、本手法は既存手法に対して顕著な性能向上を示した。