11日前
会話における感情認識のための文脈依存型埋め込み発話表現
Patrícia Pereira, Helena Moniz, Isabel Dias, Joao Paulo Carvalho

要約
会話内の感情認識(Emotion Recognition in Conversations, ERC)は、対話型エージェントがますます普及する中で、その重要性を増している。感情の認識は効果的なコミュニケーションの鍵であり、効果的かつ共感的な対話型エージェントの開発において不可欠な要素である。対話相手の感情を正確に把握するためには、対話の文脈に対する知識と理解が極めて重要である。そこで本研究では、対話の文脈に着目したERCアプローチを提案する。具体的には、前回の対話発話(conversational turns)を考慮した文脈情報を活用する。従来の文脈モデル化手法は、各発話に対して文脈に依存しない表現を生成し、その後にそれらを文脈的に統合するというアプローチが一般的であった。本研究では、事前学習済みTransformer言語モデルの文脈表現能力を活用し、各発話に対して文脈依存的な埋め込み表現を生成する新たなアプローチを提案する。本手法では、分類対象の発話にその前の対話文脈を付加したものをRoBERTaエンコーダに入力し、その後にシンプルな分類モジュールを接続する。これにより、埋め込み表現の取得時点で既に効率的な文脈表現が得られるため、後続の文脈処理を不要とする。また、導入する対話発話数がモデル性能に与える影響についても検討している。本手法の有効性は、オープンドメインのDailyDialogデータセットおよびタスク指向のEmoWOZデータセットにおいて確認された。