
要約
物理的対象を点群表現に基づく機械学習モデルで記述する手法は、科学的応用において広く用いられており、特に分子や材料の原子スケール記述において非常に適している。これまでに多数のアプローチが提案されてきた中で、原子の局所的環境をその近接原子密度の観点から記述する方法は、広く採用され、著しく成功を収めてきた。本研究では、新たな密度に基づく手法を提案する。この手法では「ウィグナー核(Wigner kernels)」の計算を用いる。これらの核は完全に等価性(equivariant)かつ体秩序(body-ordered)を保ち、径方向・化学的基底の大きさに依存せずに逐次計算可能であり、取り扱う最大体秩序に対して線形に計算コストが増加する。これは、相関の次数が増加するにつれて項数が指数関数的に増加する特徴空間モデルと対照的である。本稿では、スカラーおよびテンソル的ターゲットの両方に対して、ウィグナー核に基づくモデルの精度をいくつかの化学応用例を通じて示す。特に、広く用いられるQM9ベンチマークデータセットにおいて、最先端の精度を達成した。また、これらのアイデアが等価性を保つ幾何学的機械学習(equivariant geometric machine-learning)分野における広範な意義についても議論する。