
要約
テキスト上の数値推論は、人工知能(AI)における挑戦的な課題であり、読解力と数値推論能力を要する。従来のアプローチでは、推論プロセスを数値推論プログラムとして表現する手法が用いられてきた。しかし、多数の研究では演算子(operators)と被演算子(operands)の生成を分離しておらず、これらは数値推論プログラムの核心的構成要素であるため、複雑なタスクに対してそのプログラムを生成する能力が制限されていた。本論文では、適応的記号コンパイラを備えた数値推論モデル「numEricaL reASoning with adapTive symbolIc Compiler(ELASTIC)」を提案する。ELASTICは、エンコーダとしてRoBERTaを採用し、推論マネージャー、演算子生成器、被演算子生成器、メモリレジスタの4つのモジュールから構成されるコンパイラを備えている。このモデルは複雑な推論処理において高い頑健性を示す。また、演算子の種類の拡張を容易に可能とするため、ドメインに依存せず、被演算子の数に左右されない設計となっている。実験の結果、FinQAデータセットにおいて実行精度68.96、プログラム精度65.21を達成し、MathQAデータセットではプログラム精度83.00を記録。既存の最先端モデルを顕著に上回る性能を示した。