
要約
近年、ウェアラブルセンサー(時計やスマートフォンなど)の普及および深層学習手法の進展により、人体活動認識(Human Activity Recognition: HAR)に関する研究が活発化している。これらの深層学習手法は、原始的なセンサ信号から特徴量を手動で抽出する必要を回避できる点が大きな利点である。しかし、HARに応用された深層学習の顕著な欠点として、手動でラベル付けされた訓練データが必要となる点が挙げられる。特にHARデータセットでは、このようなラベル付きデータの取得が極めて困難である。近年、教師なし設定における進展が見られ、ラベルなしでデータにラベルを付与できる深層HARクラスタリングモデルが登場している。しかしながら、深層HARクラスタリングモデルの評価方法にいくつかの問題が存在しており、これが分野全体の評価や新たな手法の開発を困難にしている。本論文では、深層HARクラスタリングモデルの評価において存在する複数の明確な問題点に着目し、それらの問題を詳細に分析するとともに、慎重な実験を通じて、これらの問題が評価結果に与える影響を明らかにする。その後、これらの問題に対する解決策を提案し、今後の深層HARクラスタリングモデルにおける標準的な評価環境の構築を提言する。さらに、本研究では新たな深層クラスタリングモデルを提案する。当該モデルは、提案する評価設定下で既存モデルと比較して優れた性能を示す(または同等の性能を発揮し)、かつオートエンコーダーを必要としないため、より高い効率性と、より複雑なデータセットへのスケーラビリティを備えている。