M2FNet:会話における感情認識のためのマルチモーダル統合ネットワーク

会話中の感情認識(Emotion Recognition in Conversations, ERC)は、共感的な人間-機械間インタラクションの開発において極めて重要である。会話動画において感情は、音声、映像、テキストという複数のモダリティにわたって表現される。しかしながら、これらのモダリティ固有の特性により、マルチモーダルなERCは常に高い難易度を伴う課題とされてきた。従来のERC研究は、会話におけるテキスト情報に主に焦点を当てており、音声および映像モダリティの活用を軽視している。本研究では、マルチモーダルアプローチを採用することで、感情認識の精度を向上させられるものと期待している。そのため、本研究では、視覚、音声、テキストモダリティから感情関連特徴を抽出するマルチモーダル融合ネットワーク(Multi-modal Fusion Network, M2FNet)を提案する。M2FNetは、多頭注目(multi-head attention)に基づく融合機構を用いて、入力データの感情豊富な潜在表現を統合する。さらに、音声および視覚モダリティから潜在特徴を抽出するための新しい特徴抽出器を導入した。この特徴抽出器は、新たなアダプティブマージンに基づくトリプルット損失関数(adaptive margin-based triplet loss function)を用いて学習され、音声および視覚データから感情関連特徴を効果的に学習する。ERC分野において、既存手法は特定のベンチマークデータセットでは良好な性能を示すものの、他のデータセットではその性能が低下する傾向にある。本研究の結果から、提案するM2FNetアーキテクチャが、代表的なMELDおよびIEMOCAPデータセットにおいて、重み付き平均F1スコアという指標で、他のすべての手法を上回り、ERC分野における新たな最先端(state-of-the-art)性能を達成したことが明らかになった。