
要約
近年、深層学習技術は異常検出分野において有望な成果を示しており、従来の統計モデルや信号処理に基づく手法と比較して、システムのモデリングにおいて柔軟性と効率性を兼ね備えた手法として注目されている。しかし、ニューラルネットワーク(NN)には一般化能力の限界や、効果的な学習に大量のラベル付きデータを必要とすること、さらにはデータ内の空間的文脈の理解が困難であるといった、広く知られた課題が存在する。本稿では、マルチ変量時系列データに適用可能な、分岐入力自動符号化器(Autoencoder)アーキテクチャにおいて、長期短期記憶(LSTM)とキャプセルネットワーク(Capsule Networks)を統合した新たなNNアーキテクチャを提案する。提案手法は、大量のラベル付き学習データの取得という課題を克服するため、非教師学習(unsupervised learning)を用いる。実験結果から、ハイパーパラメータの最適化を行わなくても、キャプセルを導入することで過学習が顕著に抑制され、学習効率が向上することが明らかになった。さらに、非分岐入力モデルと比較して、分岐入力モデルはキャプセルを用いなくても、マルチ変量データをより一貫して学習できることも示された。提案アーキテクチャはオープンソースのベンチマークデータセットでも検証された結果、異常値検出において最先端(state-of-the-art)の性能を達成し、現行の最先端手法と比較して、評価されたすべての指標において最も優れた結果を示した。