
本稿では、濃い霧が発生するシーンにおけるセマンティックセグメンテーションのドメイン適応を目的とした新規アプローチ「FogAdapt」を提案する。近年、セマンティックセグメンテーションにおけるドメインシフトの低減に向けた研究が盛んに行われているが、悪天候条件下のシーンへの適応は依然として未解決の課題である。霧、スモッグ、霞などによる視認性の大幅な変動はドメインシフトを顕著に強化し、その結果、このような状況下での教師なし適応は極めて困難となる。本研究では、自己エントロピーとマルチスケール情報に基づく自己教師付きドメイン適応手法(FogAdapt)を提案し、霧が発生するシーンにおけるドメインシフトを最小化することを目的とする。実証的な観察から、霧の密度が高くなるほどセグメンテーション確率の自己エントロピーが上昇することを確認したことに基づき、自己エントロピーに基づく損失関数を導入し、適応プロセスをガイドする。さらに、異なる画像スケールで得られた推論結果を、不確実性に基づいて重み付けして統合し、ターゲットドメイン用のスケール不変な疑似ラベルを生成する。このスケール不変な疑似ラベルは、視認性やスケールの変化に対して堅牢である。提案手法の有効性を、実際の晴天シーンから実際の霧中シーンへの適応、および合成された非霧シーンから実際の霧中シーンへの適応という2つの設定で評価した。実験結果から、FogAdaptは霧中画像のセマンティックセグメンテーションにおいて、既存の最先端(SOTA)手法を顕著に上回ることが明らかになった。特に、CityscapesからFoggy Zurichへの適応において、標準的な設定下でmIoUで3.8%、Foggy Driving-denseでは6.0%、Foggy Drivingでは3.6%の向上を達成した。