単一リードECGに基づく睡眠ステージングのEEG支援による向上のための深層知識蒸留フレームワーク

自動睡眠ステージングの研究は現在、脳波(Electroencephalogram: EEG)信号を用いて行われています。最近では、深層学習(Deep Learning: DL)に基づく手法がこの分野で著しい進歩をもたらし、人間の精度に近い自動睡眠ステージングが可能となっています。しかし、EEGを用いた睡眠ステージングには広範かつ高価な臨床設備が必要であり、さらに設置に専門家が必要であることや被験者に対する追加の不便さから、診療所での使用には適していない面があります。心電図(Electrocardiogram: ECG)はEEGに比べて非侵襲的な代替手段であり、より適していますが、その性能は予想通りEEGを用いた睡眠ステージングと比較して劣っています。当然のことながら、EEGからECGへの知識転送を行い、最終的にECGベースの入力におけるモデルの性能を向上させることが役立つでしょう。知識蒸留(Knowledge Distillation: KD)はDLにおいて有名な概念で、より優れたが潜在的に複雑な教師モデルからコンパクトな生徒モデルへ知識を転送することを目指しています。この概念に基づき、私たちはEEGで学習されたモデルからの特徴量を利用することでECGベースの睡眠ステージングの性能を改善するクロスモーダルKDフレームワークを提案します。さらに、提案モデルの個々の構成要素について複数の実験を行い、蒸留アプローチに関するより深い洞察を得ました。モントリオール睡眠研究アーカイブ(Montreal Archive of Sleep Studies: MASS)から200人の被験者のデータを使用して研究を行いました。提案されたモデルは4クラスおよび3クラスの睡眠ステージングにおいてそれぞれ重み付きF1スコアで14.3%と13.4%の向上を示しました。これは単一チャンネルECGベースの睡眠ステージングにおいて4クラス(覚醒-浅い眠り-深い眠り-REM)および3クラス(覚醒-ノンレム-REM)分類での性能向上のためにKDが有効であることを示しています。