
要約
条件付き生成モデルは、データとラベルの背後にある同時分布を学習し、条件付きデータ生成を実現することを目指している。その中でも、補助分類器付き生成対抗ネットワーク(AC-GAN)は広く用いられているが、生成サンプルのクラス内多様性が低いという問題を抱えている。本論文では、この問題の根本的原因として、AC-GANの分類器が生成器に依存しない(generator-agnostic)構造であることが指摘されている。このため、生成器が同時分布に近づくための有益なガイドラインを提供できず、結果として条件付きエントロピーが最小化され、クラス内多様性が低下してしまう。この理解を踏まえ、本研究では新たな条件付きGAN、すなわち補助的判別型分類器を備えたADC-GANを提案する。具体的には、提案する補助的判別型分類器は、実データと生成データのクラスラベルを区別的に認識することで、生成器に依存する(generator-aware)構造となる。理論的解析により、本モデルでは元のディスクリミネータが存在しなくても生成器が同時分布を忠実に学習できることを示した。これにより、ADC-GANは係数ハイパーパラメータの値やGAN損失関数の選択に強く、学習過程においても安定性を示す。合成データおよび実世界データを用いた広範な実験結果から、最先端の分類器ベースおよび射影ベースの条件付きGANと比較して、ADC-GANが条件付き生成モデリングにおいて優れた性能を発揮することが明らかになった。