
要約
空間時系列予測は、多岐にわたる応用分野で注目を集めている。交通流予測はその代表的かつ典型的な例である。交通流に見られる複雑かつ長距離にわたる空間時系列相関は、この問題を極めて取り組みがたい課題としている。従来の手法は、主に浅いグラフ畳み込みネットワーク(GNN)と時系列抽出モジュールを用いて、空間的依存関係と時系列的依存関係をそれぞれモデル化する。しかし、これらのモデルの表現力には限界があり、以下の2点が主な要因である:(1)浅いGNNでは長距離の空間的相関を捉えることができない、(2)空間的接続のみを考慮しており、交通ネットワークの包括的理解に極めて重要な多くの意味的接続(semantic connections)が無視されている。こうした課題に対処するため、本研究では「空間時系列グラフ常微分方程式ネットワーク(Spatial-Temporal Graph Ordinary Differential Equation Networks, STGODE)」を提案する。具体的には、テンソルに基づく常微分方程式(ODE)を用いて空間時系列ダイナミクスを捉えることで、より深いネットワーク構造の構築が可能となり、空間的・時系列的特徴量を同時に活用できる。さらに、ネットワークのより包括的な理解を図るため、本モデルでは意味的隣接行列(semantical adjacency matrix)を導入し、長期的な時系列依存関係を捉えるために、適切に設計された時系列ドilated畳み込み構造を採用している。複数の実世界交通データセットにおける実験結果から、本モデルは最先端のベースライン手法を上回る優れた性能を達成した。