
要約
Aspect-based Sentiment Analysis(ABSA)は、特定の観点(aspect)に対する感情極性を予測することを目的とする、感情分析分野における細分化されたタスクである。従来の研究では、句構造情報(たとえば依存構文木)がABSAの性能向上に有効であることが示されている。近年では、事前学習モデル(PTM)もABSAにおいて有効性を示している。このことから自然に生じる疑問として、「PTMはABSAに十分な句構造情報を内包しているのか? それさえあれば、PTMのみに基づいて優れたABSAモデルを構築できるのか?」という問いが提起される。本研究では、まずABSAタスクにおいて代表的な複数のモデルを対象に、PTMから導出される構文木と依存解析器によって得られた構文木を比較した。その結果、微調整済みRoBERTa(FT-RoBERTa)から導出される構文木が、解析器によって提供される構文木を上回ることを明らかにした。さらに実験的な分析から、FT-RoBERTaから導出される構文木は感情語に焦点を当てており、ABSAタスクに有益であることが示された。また、実験結果により、純粋なRoBERTaベースのモデルが、4言語にまたがる6つのデータセットにおいて、従来の最先端(SOTA)性能を上回るか、あるいはそれに近づくことが確認された。これは、RoBERTaがタスクに適した構文情報を間接的に組み込んでいることの証左である。