
近年、深層ニューラルネットワークは、ユーザーの嗜好を効果的に捉え・モデル化できる点から、推薦システムへの応用が広がっている。特に、ディープラーニングにおけるアテンション機構により、推薦システムは多様な特徴を適応的に統合することが可能となる。具体的には、次アイテム推薦タスクに関して、以下の3つの観察が得られている:1)ユーザーの順次的行動記録は時間的位置に集約される(「時間集約性」)、2)ユーザーの個別的な嗜好はこの「時間集約性」と関連している(「個人別時間集約性」)、3)ユーザーの短期的関心が次のアイテム予測・推薦において重要な役割を果たす。本論文では、上記の観察を捉えるため、新たな時刻意識型長期・短期アテンションネットワーク(Time-aware Long- and Short-term Attention Network, TLSAN)を提案する。具体的には、TLSANは以下の2つの主要な構成要素からなる。第一に、TLSANは「個人別時間集約性」をモデル化し、長期行動におけるカテゴリ意識的な相関を考慮した学習可能な個人別時間位置埋め込みを用いて、ユーザー固有の時間的嗜好を学習する。第二に、長期および短期の特徴ごとのアテンション層を導入し、ユーザーの長期的および短期的嗜好を効果的に捉え、正確な推薦を実現する。特に、アテンション機構によりTLSANはユーザーの嗜好を適応的に利用可能となり、長期および短期のアテンション層におけるその活用は、疎な相互作用データに対しても高い処理能力を発揮する点で特徴的である。本研究では、異なる分野(および異なるサイズ)のAmazonデータセットを用いた広範な実験を行い、その結果、TLSANはユーザー嗜好の捉え方および時刻に敏感な次アイテム推薦において、最先端のベースラインを上回ることが確認された。