
共同エンティティおよび関係抽出フレームワークは、エンティティ認識と関係抽出を同時に実行する統合モデルを構築し、両タスク間の依存関係を活用することで、パイプラインモデルが抱える誤差伝播問題を緩和する。現在の共同抽出に関する研究は、パラメータ共有や同時デコード、あるいは特定のテクニック(例えば、準マルコフ決定過程として定式化する、複数ラウンドの読解理解タスクとして定式化するなど)を用いて、エンティティ認識と関係抽出の相互作用を強化することに注力している。しかし、依然として二つの課題が残っている。第一に、多数の手法が用いる相互作用は依然として弱く、一方通行的であり、両タスク間の相互依存関係を適切にモデル化できない。第二に、多くの手法は関係トリガー(relation triggers)を無視しているが、これらは人間がなぜその文で特定の関係を抽出するのかを説明する上で不可欠な情報である。関係抽出において本質的であるにもかかわらず、これらのトリガーは軽視されがちである。この問題に対処するため、本研究では「トリガー・センスメモリフロー枠組み(Trigger-Sense Memory Flow Framework, TriMF)」を提案する。本フレームワークでは、エンティティ認識と関係抽出のタスクで学習されたカテゴリ表現を記憶するメモリモジュールを構築し、その上に多段階のメモリフロー注意機構を設計することで、エンティティ認識と関係抽出の間の双方向的相互作用を強化する。さらに、人間によるラベル付けを一切用いずに、トリガーセンサモジュールを通じて文内の関係トリガー情報を自動的に強化することができる。これによりモデルの性能が向上し、予測結果の解釈性も高まる。実験結果から、本提案フレームワークは、SciERCで関係F1スコアを52.44%(+3.2%)、ACE05で66.49%(+4.9%)、CoNLL04で72.35%(+0.6%)、ADEで80.66%(+2.3%)まで向上させ、各データセットで最先端の性能を達成した。