
近年、深層生成モデル(Deep generative modeling)は著しい進展を遂げており、現在では実世界のデータと類似した模擬サンプル(例えば画像)が一般的に生成されるようになっている。しかし、任意のモデルにおいて生成品質は一貫性がなく、サンプル間で顕著な差異が生じることが多い。本研究では、実データ分布と生成データ分布の間のエントロピー正則化f-ダイバージェンスの勾配フローに基づく新しい手法「ディスクリミネータ勾配フロー(Discriminator Gradient flow, DGflow)」を提案する。この勾配フローは非線形のフォッカー・プランク方程式(Fokker-Plank equation)の形をとり、等価なマクキー・ヴラソフ過程(McKean-Vlasov process)からのサンプリングによって容易にシミュレーション可能である。本手法は品質が低いサンプルを改善することで、従来の手法(DRSおよびMH-GAN)で用いられる無駄なサンプル棄却を回避する。既存の研究が特定のGANの変種に特化しているのに対し、本手法はベクトル値のディスクリミネータを持つGANに適用可能であり、さらにVAEやノーマライジングフロー(Normalizing Flows)といった他の深層生成モデルにも拡張可能であることを示す。複数の合成データ、画像、テキストデータセットにおける実証結果から、DGflowが多様な生成モデルにおいて生成サンプルの品質を顕著に向上させ、最先端のディスクリミネータ最適輸送(Discriminator Optimal Transport, DOT)およびディスクリミネータ駆動型潜在空間サンプリング(Discriminator Driven Latent Sampling, DDLS)手法を上回ることを確認した。