17日前

絵画における図像分類のためのデータセットと畳み込みモデル

Federico Milani, Piero Fraternali
絵画における図像分類のためのデータセットと畳み込みモデル
要約

芸術における象徴学(Iconography)とは、美術作品の視覚的コンテンツを分析し、そのモチーフや主題を特定するとともに、それらがどのように表現されているかを特徴づける学問分野である。この分野は、意味の解釈、表現の起源および時空間的拡散の解明、アーティストや作品間の影響関係の研究など、多様な目的のために活発な研究が行われている。近年、美術画像のデジタルアーカイブが急速に増加したことに伴い、コンピュータビジョン技術を用いて美術画像の分析をこれまでにない規模で行うことが可能となり、象徴学の研究および教育を支援する新たな可能性が生まれている。本論文では、象徴学分類を目的とした新規の絵画データセットを提示し、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)分類器を用いた美術作品の象徴的要素の認識に向けた定量的・定性的な評価結果を報告する。提案する分類器は、視覚的特徴が極めて類似するクラスが存在するため困難な課題であるキリスト教絵画における聖人識別において、良好な性能(精度71.17%、再現率70.89%、F1スコア70.25%、平均精度72.73%)を達成した。結果の定性的分析から、CNNは各聖人の表象を特徴づける伝統的な象徴的モチーフに注目し、それらの手がかりを活用することで正確な識別を実現していることが明らかになった。本研究の最終的な目的は、象徴的要素の自動抽出、分解および比較を可能とし、象徴学的研究の推進および自動アート作品のアノテーション支援を実現することである。