MIA-Prognosis:治療反応を予測するためのディープラーニングフレームワーク

臨床予後予測は極めて重要であるが、同時に困難な課題でもある。治療反応や患者の生存期間に関連する有意なバイオマーカーの探索に向けた研究が多数行われている。しかしながら、これらのバイオマーカーは一般的に高コストかつ侵襲的であり、新規治療法に対しても十分な性能を発揮するとは限らない。一方で、臨床現場では、マルチモーダルかつ異質的で、時系列的に整合されていないデータが継続的に生成されている。本研究では、画像診断情報、検査所見、臨床情報など、容易に入手可能なデータを用いて、患者の予後および治療反応を統一的な深層学習アプローチで予測することを目的とする。既存の研究は、単一のデータモダリティに焦点を当てたり、時系列的な変化を無視する傾向にある。特に実臨床では、臨床時系列データは非同期的であることが多く、観察間隔が不規則に記録される。本研究では、予後モデル構築をマルチモーダル非同期時系列分類問題として定式化し、測定(Measurement)、介入(Intervention)、評価(Assessment)の三要素(MIA)情報を統合したMIA-Prognosisフレームワークを提案する。このフレームワークでは、非同期時系列データを効果的に処理できる「シンプルな時系列アテンション(Simple Temporal Attention; SimTA)」モジュールを新たに開発した。合成データセットを用いた実験により、SimTAが従来のRNNベースのアプローチに比べて優れた性能を示すことが確認された。さらに、実際の非小細胞肺がん患者(抗PD-1免疫療法を受療した後退的データセット)を用いた実データでの評価においても、本手法は免疫療法反応の予測において有望な結果を達成した。特に注目すべきは、当該予測モデルが長期生存に関する低リスク群と高リスク群のさらに細分化を可能にした点である。