
要約
複雑な相互作用をモデル化する潜在能力を有するため、グラフニューラルネットワーク(GNN)に基づく手法は、分子の量子力学的性質を予測するのに広く用いられている。既存の大多数の手法は、原子をノードとしてモデル化する分子グラフとして分子を扱う。これらの手法では、各原子の化学的環境を、分子内の他の原子との二体間相互作用をモデル化することで特徴づける。これらのアプローチは著しい成功を収めているが、三体以上(すなわち、三つ以上の原子間)の多体相互作用を明示的に考慮する研究は依然として限られている。本論文では、ノードとエッジが多様な種類を持つ新たな分子表現として、異種分子グラフ(Heterogeneous Molecular Graph, HMG)を提案する。HMGは、多体相互作用を効果的にモデル化する可能性を有している。また、HMGは複雑な幾何学的情報を保持する能力も備えている。HMGに格納された豊富な情報を化学的予測問題に活用するため、ニューラルメッセージパッシングスキームに基づいて、異種分子グラフニューラルネットワーク(HMGNN)を構築した。HMGNNは、分子全体のグローバル表現とアテンション機構を予測プロセスに組み込む。本モデルの予測結果は、原子座標の並進・回転に対して不変であり、原子インデックスの順列に対しても数学的に不変である。実験結果によれば、QM9データセットにおける12のタスクのうち9つで、最先端の性能を達成した。