
要約
セッションベース推薦のタスクは、匿名化されたセッションに基づいてユーザーの行動を予測することである。近年の研究では、ターゲットセッションをシーケンスまたはグラフとしてモデル化することで、その中でのアイテム遷移を捉えることが主なアプローチであるが、他のユーザーによって生成された異なるセッション間における複雑なアイテム遷移にはほとんど注目が向けられていない。これらのアイテム遷移には、潜在的な協調情報が含まれており、類似した行動パターンを反映していると考えられる。本研究では、このような遷移情報がターゲットセッションの推薦に寄与する可能性を仮定し、新たな手法である「デュアルチャネルグラフ遷移ネットワーク(Dual-channel Graph Transition Network: DGTN)」を提案する。本手法は、ターゲットセッションだけでなく、その近傍(類似)セッションにおけるアイテム遷移も同時にモデル化することを目的としている。具体的には、ターゲットセッションとその類似セッションを統合して一つのグラフとして構築し、チャネル認識型の伝播機構を用いて遷移信号を埋め込み表現に明示的に注入する。実世界データセットを用いた実験により、DGTNが他の最先端手法を上回る性能を示した。さらに、詳細な分析を通じて、デュアルチャネルによるアイテム遷移モデル化の妥当性が確認され、今後のセッションベース推薦の研究における有望な方向性が示唆された。