
要約
関係の構成パターンを捉えることは、知識グラフ補完において重要なタスクであり、学習された知識上でのマルチホップ推論への基盤となる基本的なステップでもある。これまでに、複素数値対角行列の積を用いて複合関係をモデル化する、回転に基づく変位手法が多数提案されてきた。しかし、これらの手法は複合関係に対していくつかの過度に単純化された仮定を置く傾向にあり、例えば関係の可換性を強制したり、エンティティに依存しない独立性を仮定したり、意味的な階層構造を無視するといった問題を抱えている。こうした課題を体系的に解決するため、本研究では、関係の複雑な構成パターンをより適切にモデル化するための新しい知識グラフ埋め込み手法「DensE」を提案する。本手法の特徴は、各関係を3次元(3-D)ユークリッド空間におけるSO(3)群に基づく回転演算子とスケーリング演算子に分解することにある。この設計原理により、以下の利点が得られる。(1)複合関係に対して、対応する対角関係行列が可換でなくてもよく、現実の応用シーンで一般的に見られる非可換性を反映できる。(2)関係演算とエンティティ埋め込みとの自然な相互作用を保持する。(3)スケーリング演算子により、エンティティの内在的な意味的階層構造をモデル化する能力が向上する。(4)パラメータ数および学習時間の観点から、高い計算効率を維持しつつ、DensEの表現力が強化される。(5)四元数空間ではなくユークリッド空間でエンティティを扱うことで、関係パターンの直接的な幾何学的解釈が可能となる。複数のベンチマーク知識グラフにおける実験結果から、DensEは現在の最先端モデルを上回る性能を示し、特に複合関係に対する欠落リンク予測において顕著な優位性を発揮した。