対照に依存しないMRIセグメンテーションのための学習戦略

本稿では、新たに提案する深層学習戦略により、全く前処理を行わない脳MRIスキャンに対して、コントラストに依存しないセマンティックセグメンテーションを初めて実現した。この手法は、新たなモダリティに対して追加の訓練やファインチューニングを必要としない。従来のベイズ的手法は、無教師的な強度モデルを用いてこのセグメンテーション問題を扱うが、計算リソースを大量に要するという課題がある。一方、学習ベースの手法はテスト時の高速性を発揮するものの、訓練時に利用可能なデータに敏感である。本研究で提唱する学習手法「SynthSeg」は、強度画像を必要としない訓練用のセグメンテーションマスクを用い、訓練中にリアルタイムで多様なコントラストを持つ合成画像を生成する。これらの合成画像は、従来のベイズ型セグメンテーションフレームワークにおける生成モデルを用いて作成され、外観、変形、ノイズ、バイアスフィールドに関するランダムにサンプリングされたパラメータを用いる。各ミニバッチで異なる合成コントラストが生成されるため、最終的なネットワークは特定のMRIコントラストに偏らない。本手法は、1,000人以上を含む4つのデータセット、4種類のMRコントラストを用いて包括的に評価された。その結果、本手法はデータ内のすべてのコントラストに対して正確なセグメンテーションを達成し、従来のベイズ的手法と比較してわずかに優れた性能を示すとともに、処理速度は3桁以上高速であることが明らかになった。さらに、同じ種類のMRIコントラスト内でも、実画像を用いた訓練と比較して、本戦略はデータセット間での汎化性能が著しく優れている。最後に、現実的でないコントラストを含む広範な合成データを生成することで、ニューラルネットワークの汎化能力が向上することが確認された。本研究のコードおよびモデルは、GitHubにてオープンソースで公開されている(https://github.com/BBillot/SynthSeg)。