
要約
機械的読解理解(Machine Reading Comprehension: MRC)は、与えられた文章に基づいて質問に対する正しい回答を導き出すことを要求するAIの課題である。MRCシステムは、必要に応じて質問に回答するだけでなく、与えられた文章から答えが得られない場合を正しく認識し、適切に回答を控える能力も必要である。特に、回答不能な質問を含むMRCタスクでは、エンコーダーに加えて、回答の妥当性を検証するための重要な検証モジュール(verifier)が不可欠となる。しかし、現在のMRCモデルの主流は、単に「読解」に注力し、優れた事前学習済み言語モデルをエンコーダー部として採用することで、大きな性能向上を達成している。本論文は、回答不能な質問を含むMRCタスクにおけるより優れた検証機構(verifier)の設計を目的としている。人間が読解問題を解くプロセスに着想を得て、2段階の読解と検証戦略を統合した「後悔読解者(Retro-Reader)」を提案する。このアプローチは以下の2段階を含む:1)概略的読解(sketchy reading):文章と質問の全体的な関係性を簡潔に検討し、初期判断を生成する;2)詳細的読解(intensive reading):回答の妥当性を検証し、最終的な予測を出力する。提案手法は、SQuAD2.0およびNewsQAという2つの標準ベンチマークMRCデータセット上で評価され、新たな最先端性能を達成した。有意性検定の結果、強力なベースラインモデルであるELECTRAおよびALBERTと比較して、本モデルは有意に優れた性能を示した。さらに、提案読解者の有効性を解釈するための体系的な分析も実施された。