
要約
知識グラフ埋め込み(Knowledge Graph Embedding)は、エンティティおよび関係を低次元ベクトル(または行列、テンソルなど)として表現することを目的とする技術であり、知識グラフにおける欠落リンクの予測において強力な手法として示されている。既存の知識グラフ埋め込みモデルは、対称性/反対称性、逆関係、合成といった関係パターンのモデリングに主眼を置いてきた。しかし、多くの既存手法は、現実世界の応用において一般的な意味的階層構造を適切に表現できていない。この課題に対処するため、本研究では新たな知識グラフ埋め込みモデル「階層認識型知識グラフ埋め込み(Hierarchy-Aware Knowledge Graph Embedding, HAKE)」を提案する。HAKEは、エンティティを極座標系にマッピングするアプローチを採用している。この手法のインスピレーションは、極座標系における同心円が階層構造を自然に表現できることにある。具体的には、半径座標(radial coordinate)は階層の異なるレベルに位置するエンティティをモデル化する目的で用いられ、半径が小さいエンティティはより高い階層に位置すると期待される。一方、角度座標(angular coordinate)は、同じ階層に属するエンティティを区別するために用いられ、それらのエンティティは概ね同じ半径を持つが、異なる角度を持つことが期待される。実験の結果、HAKEは知識グラフにおける意味的階層構造を効果的にモデル化でき、リンク予測タスクにおけるベンチマークデータセットにおいて、既存の最先端手法を顕著に上回ることが確認された。