
要約
長期的な交通予測は、交通システムの複雑さおよび影響要因の変動性の高さから、極めて困難な課題である。本論文では、空間時系列要因に着目し、道路網グラフ上の異なる地点における未来の時間ステップにおける交通状況を予測するため、グラフ多重注目ネットワーク(GMAN)を提案する。GMANはエンコーダ・デコーダ構造を採用しており、エンコーダおよびデコーダともに複数の空間時系列注目ブロックを含んでおり、空間時系列要因が交通状況に及ぼす影響をモデル化する。エンコーダは入力となる交通特徴量を符号化し、デコーダは出力シーケンスを予測する。エンコーダとデコーダの間に、符号化された交通特徴量を変換して、将来の時間ステップのシーケンス表現を生成し、デコーダの入力として用いる「変換注目層(transform attention layer)」を導入している。この変換注目メカニズムにより、過去と未来の時間ステップ間の直接的な関係をモデル化でき、予測時間ステップ間の誤差伝播問題を緩和することが可能となる。2つの実世界交通予測タスク(交通量予測および交通速度予測)における実験結果から、GMANの優位性が示された。特に、1時間先予測において、従来の最先端手法と比較して、MAE(平均絶対誤差)指標で最大4%の改善が達成された。本研究のソースコードは、https://github.com/zhengchuanpan/GMAN にて公開されている。