
要約
人間の会話におけるメッセージは、本質的に感情を含んでいる。テキストによる会話から感情を検出するというタスクは、ソーシャルネットワークにおける意見抽出など、広範な応用が可能である。しかし、機械が会話における感情を分析できるようにするには、困難が伴う。その理由の一つは、人間が感情を表現する際に、文脈や一般常識の知識に依存するためである。本論文では、これらの課題に対処するために、コンテキストを階層的自己注意機構を用いて解釈し、外部の一般常識知識を文脈に応じた感情的グラフ注意機構により動的に活用する、知識拡張型トランスフォーマー(Knowledge-Enriched Transformer: KET)を提案する。複数のテキスト会話データセットにおける実験結果から、文脈情報および一般常識知識の両方が感情検出性能に一貫して寄与することが示された。さらに、実験結果は、KETモデルが多数のテストデータセットにおいて、F1スコアの観点で最先端モデルを上回ることを示している。