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AIとロボットが連携し、多様な科学情報を統合して新素材を発見 – MITが実世界向け実験支援プラットフォーム「CRESt」を開発

5日前

マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームが、科学的知識を多様な形で統合し、実験を自律的に設計・実行するAIシステム「CRESt(Copilot for Real-world Experimental Scientists)」を開発した。このシステムは、文献情報、化学組成、微細構造画像、実験データなど、複数のモダリティ(形式)の情報を統合して、新材料の開発を加速する。研究は『ネイチャー』に掲載され、燃料電池用触媒材料の発見に成功した。 従来の機械学習モデルは、特定のデータ種類に限定され、人間の科学者が持つ経験や直感、協働によるフィードバックを反映できなかった。これに対し、CREStはロボット設備と連携し、液体処理ロボット、カーボスルムショック合成装置、電気化学テスト装置、電子顕微鏡などを使って高スループットで材料を合成・評価。カメラと視覚言語モデルで実験を監視し、異常を検知し、人間研究者にテキストや音声で修正を提案する。 研究チームは、3か月間で900以上の化学組成を探索し、3500回以上の電気化学試験を実施。その結果、8元素からなる多元素触媒を発見。これは、貴金属であるパラジウムよりも単価あたり9.3倍高い出力密度を達成し、従来のデバイスに比べて貴金属使用量は1/4に削減された。これは、長年にわたって課題とされてきた「触媒の高コスト化」問題への実用的解決策となる。 CREStの核となるのは、文献データと実験結果を統合した大規模マルチモーダルモデル。研究者は自然言語でシステムとやり取りでき、実験の設計や画像解析を依頼できる。システムは、過去の知識から「知識埋め込み空間」を構築し、主成分分析で探索空間を圧縮。その後、ベイズ最適化を用いて効率的な実験を提案。新たなデータと人間のフィードバックを繰り返し学習することで、知識ベースが進化し、学習効率が飛躍的に向上する。 研究チームは、CREStが「人間の研究者を補助するアシスタント」であると強調。人間の判断やデバッグが不可欠であり、システムは完全な代替ではなく、自律的な実験ラボの第一歩だと位置づけている。今後、エネルギー材料や医薬品開発など、複雑な実験プロセスをAIが支援する時代が近づいている。

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