AIインフルエンサーにブレーキ:ブランド、効果に疑問を呈し投資縮小へ
2025年上半期、広告ブランドの多くがAIインフルエンサーへの投資を縮小している。インフルエンサーマーケティングプラットフォーム「Collabstr」のデータによると、AI関連のブランド提携は2024年同期比で約30%減少。その背景には、消費者からの反発と、AI生成コンテンツのエンゲージメント不足がある。コラボストの共同創業者ケイ・ドゥレイ氏は、「AIコンテンツはまだ人間のインフルエンサーほど魅力的な反応を引き出せていない」と指摘。特に、ファッションブランド「Guess」が雑誌『ヴォーグ』でAIモデルを起用した際、SAG-AFTRA(俳優組合)を含む批判が相次ぎ、ブランドイメージに悪影響を与えた例がある。また、美容ブランド「ドーヴ」はAIモデルの使用を完全に辞退している。 ブランド側の懸念は「人間を置き換える」形でのAI利用が消費者に反感を買うこと。マーケティング企業「Obviously」のマエ・カーワウスキーCEOは、「AI生成コンテンツが明確に人間を置き換えると、ユーザーはすぐ怒る」と語る。一方で、AIインフルエンサーの定義は多様で、Lil Miquelaのような仮想インフルエンサーと、AI生成コンテンツのみを配信するアカウントが含まれる。 しかし、完全な撤退ではなく、AIの活用は部分的・補助的に行われている。Billion Dollar Boyの調査では、79%のマーケターがAI生成コンテンツへの投資を拡大している。特に、撮影済みのコンテンツをAIで迅速に編集・修正するツール(例:Mirage)の活用が注目されている。これにより、クリエイターの契約価値を守る可能性も生まれる。 一方で、AIインフルエンサーの根本的な課題は「信頼性」の欠如。Linqiaのキース・ベンデス氏は、「AIは個人的な体験を持たないため、本物の共感や信頼を生み出せない」と指摘。ブランドが求める「 authentic(本物らしさ)」は、AIの本質的な限界である。 今後、Sora 2などの高品質AI生成ツールの登場により、AIコンテンツが人間と区別できなくなる可能性も。ドゥレイ氏は「いずれはブランドがAIを使っていることに気づかずに、ただエンゲージメントの高いコンテンツとして利用する時代が来る」と予測。AIインフルエンサーの未来は、技術進化と消費者の信頼感の狭間で、慎重な戦略が求められる。