OpenAI、資金調達の限界に直面 1兆ドル規模の投資計画と現実の資金不足の落差
OpenAIは、世界をリードする生成AI企業としての地位を確立しているが、その財務基盤には深刻な懸念が浮上している。同社は「AIバブル」の象徴的存在であり、膨大な投資を計画しているものの、実際の資金調達には課題が残る。過去数カ月間、OracleやCoreWeave、Broadcomなどに合わせて、合計で約1兆ドル規模の計算資源調達契約を締結。さらに、NVIDIAからは1000億ドル規模の戦略的提携が発表されたが、実際の出資は100億ドルにとどまり、残りはOpenAIが特定の支出を達成した上で解禁される仕組み。このように、大きな数字は「ヘッドライン」に過ぎず、実質的な資金流入は限定的だ。 エネルギー面でも深刻な課題がある。同社が確保した計算能力は、約20ギガワットに相当し、これは20基の原子力発電所の出力に匹敵する。しかし、新規発電所の建設には7年から11年を要し、コストは300億ドル以上。電力供給の遅延が、AIインフラの実現を妨げる長期的リスクとなる。 開発コストも圧倒的だ。AI研究者の給与はMetaの影響で上昇し、Jony Iveのハードウェア開発プロジェクトも巨額の資本を必要とする。また、多数のスタートアップへの出資や、AIアプリの「試行錯誤」型展開も資金を食う。CEOのサム・アルトマンは、同社が「史上最高の資本集約型企業」と評し、2029年までに1150億ドルの資金消耗を見込んでおり、これは当初予想より800億ドルも増加した。 一方で、収益は成長している。年間經常収益(ARR)は120億ドル以上、月間アクティブユーザーは8億人を超え、アプリ開発のスピードも高い。しかし、多くのサービスは「ヘッドライン」を狙ったものであり、AmazonやGoogle、Metaなど大手企業の基盤を脅かすほどの収益力やマージンを確保できていない。AIモデルのトレーニングと推論コストが高く、収益構造が持続可能かは不透明だ。 Sam Altmanは「秘密の計画」があると語るが、具体的な内容は明らかにされていない。一部の分析では、資金調達の仕組み自体が「世界に先駆けて設計されていない」と指摘。中央銀行が金融危機時に最後の貸し手となるように、NVIDIAがOpenAIの「最後の貸し手」になっている現状は、警戒すべき兆候だ。 結局のところ、OpenAIは「Wile E. Coyote」の状態にある――崖の上で走り続け、下の地盤が存在しないことに気づかない。資金が途切れれば、その夢は崩壊する。現状では、巨大な投資計画と実際の資金調達の間に、大きなギャップが存在している。