AIデータ市場でMercorが注目される中、競合のMicro1が5億ドルの評価額で資金調達を実施。
AIデータ市場に大きな変化が起きている。MetaがScale AIに140億ドルを投資し、同社のCEOを採用したことを受け、OpenAIやGoogle DeepMindをはじめとする主要AIラボは、Scale AIとの提携を終了する意向を表明した。この動きは、AIラボが自社の研究データがMetaの手に渡るリスクを懸念しているためとみられ、市場の信頼関係に大きな影響を与えた。しかし、AIモデルの学習には継続的に高品質なデータが必要であり、その需要は依然として旺盛だ。この空白を埋めるべく、新たなスタートアップが台頭している。 その中で注目されるのが、設立から3年足らずのMercorだ。TechCrunchの報道によると、MercorはSeries Cでの100億ドルの評価額をめぐって複数の投資オファーを受け、わずか7か月前にはSeries Bで20億ドルの評価額を達成していた。同社は年間定期収益(ARR)5億ドルを、Anysphere(Cursorの開発元)よりも速く達成する見通しを示しており、急速な成長を続けている。さらに、AIエージェントの訓練環境を提供する新サービスも展開しており、データラベル付けから「シミュレートされた学習環境」へのシフトという新たなトレンドに乗りつつある。 一方、Surgeは、VCの支援を受けず、2024年に10億ドルの売上を達成し、現在250億ドルの評価額での資金調達を検討している。規模ではMercorを上回るが、Mercorの急成長が競争を激化させている。 こうした中、Micro1も注目される存在だ。同社は3年目のスタートアップで、O1 Advisorsがリードする3500万ドルのSeries Aを調達し、5億ドルの評価額を獲得した。24歳のCEOであるアリ・アンサリ氏は、MicrosoftやFortune 100企業と提携し、年間収益は2025年初頭の700万ドルから5000万ドルまで急増。同社が開発したAI採用ツール「Zara」は、スタンフォードやハーバードの教授を含む数千人の専門家を採用し、高品質なデータ作成に貢献している。 市場のトレンドは、単なるデータラベリングから、ドメインエキスパートによる高精度データ、そしてAIエージェントの訓練に適した仮想環境の提供へと進化している。AIラボは複数のデータプロバイダーと連携する傾向があり、市場は一社独占ではなく、多様なプレイヤーが共存する構造が定着しつつある。この変化は、データの質とスピードを重視するAI開発の進化と深く結びついており、今後のAI技術の進展に大きな影響を与えるだろう。