NvidiaとIntelが50億ドル契約でAMDを追う、統合型チップ市場での激化
NVIDIAとインテルが50億ドル規模の戦略的提携を発表したが、その背景にはAMDのシェアを奪う意図があるとみられている。NVIDIAのジェンセン・ファンCEOとインテルのリップ・ブー・タンCEOが共同で開いたウェブ会議で、両社は「ARMアーキテクチャへのコミットメントは変わらない」と明言。ARMベースのチップ開発やTSMCでの生産体制も継続するとして、提携が製造戦略の転換ではないことを強調した。 しかし、実際の目的は明確だ。AMDはCPUとGPUを統合したチップ(APU)で長年競争力を維持しており、PS4/PS5、Xboxシリーズ、Steam Deckなどに採用され、近年は高性能かつ低消費電力なラップトップやハンドヘルドデバイスの中心的存在となっている。特に「ストリックス・ハロ」(Ryzen AI Max)は、最高性能のCPUとGPUを統合し、128GBの共有メモリを搭載し、手のひらで持ち運べるサイズに収まるAIモデルのローカル実行を可能にしている。 一方、NVIDIAはこの分野に注力していなかった。ファンCEOは「CPUとGPUを統合した市場は、現在NVIDIAが十分にカバーしていない」と認め、1億5000万台規模のノートPC市場に参入する意図を示した。インテルのCPUを自社のラックスケールサーバーに採用する計画も明らかにした。これは、NVIDIAが自社のARMプロセッサ開発を続ける一方で、インテルのCPUを新たなソリューションとして活用する戦略の表れだ。 提携の詳細はまだ不明。TSMCによる製造が続くのか、米国内での生産が進むのか、採用されるプロセス技術は何かなど、多くの疑問が残っている。タンCEOは「検証を経て、最適な選択を進める」とのみ述べ、具体的な約束は避けた。また、Foveros 3Dチップスタック技術の活用を示唆したが、協業の具体化には至らない。 結局、この提携は「AMDの強みを上回る統合チップの開発」を狙った、明確な競争戦略の一つと解釈できる。AMDが高価格帯に留まっている中、NVIDIAとインテルがコスト・性能・サイズのバランスを重視した製品を提供すれば、ゲームコンソールや低価格ハイエンドデバイスの進化が期待される。競争の激化は、ユーザーにとっても技術革新の加速につながる可能性がある。