アルペングローとバーデックス、AIを活用した前立腺がん診断の共同開発を発表
米国シアトルとマサチューセッツ州ケンブリッジ——AIを活用した3D病理学のリーディングカンパニーであるアルペングロウ・バイオサイエンシズ(Alpenglow Biosciences)は、MRIを用いたがん検出に特化したバイオフィジクスAI企業・バーデックス(Virdx)と戦略的提携を発表した。この多項目・長期にわたる協業は、次世代診断ツールの開発を加速し、特に前立腺がんのAI診断精度を高めることを目指している。 この提携の中心は、アルペングロウが開発する全組織を非破壊的に3D化するライトシート顕微鏡(LSM)プラットフォームを、バーデックスのMRIベースのがん診断AIに統合することにある。バーデックスは、放射線科医が非侵襲的かつ尊厳ある方法で前立腺がんを診断できるようにするため、MRI画像から組織の特性を解析するAIモデルの開発を進めている。しかし、現行のMRIでは微細な構造や希少な病理所見が捉えにくく、診断の信頼性に限界がある。そこで、アルペングロウのLSM技術により、最大4cm²を超える全断面の前立腺組織を高解像度3Dで画像化し、そのデータを「高精度の真実データ(ground truth)」として活用する。このデータは、MRIの予測精度を検証・改善するための基盤となる。 両社は、NVIDIAのGPUを自社インフラに導入し、1つあたり数テラバイトに及ぶ大規模3Dデータを処理する高速パイプラインを構築。これは従来のCPUベースの処理に比べて10倍以上高速であり、大規模な臨床試験の実施を可能にしている。アルペングロウはNVIDIA Inceptionプログラムのメンバーとして、先端技術の開発を支援されている。 アルペングロウのニコラス・レーダーCEOは「高品質な3D病理データが、次世代AI診断ツールの根幹を成す」と強調。バーデックスのジャコブ・マレーCEOも「アルペングロウの革新的技術とスピード感あるチームが、私たちのAIエンジンの発展を支えている。患者の健康と命を守る診断モデルの開発に不可欠な真実データを共同で生成できる」と述べた。 この提携は、放射線学と病理学の境界を越える「3D病理学」の重要性を示すとともに、AI診断の信頼性を高めるための「真実データ」の価値を再確認するものだ。前立腺がんに限らず、今後のがん診断における非侵襲的・定量的・個別化診断の基盤が、この協業から築かれつつある。