AIが監督を務めたオクレン・ボールーズ、実験は成功したがファンの反発も
カリフォルニア州オークランドを拠点とする独立リーグ球団「オークランド・ボールァーズ」が、AIによるゲームマネジメントを実施した試みが、ファンの反発を招いた。同チームは、メジャーリーグ・オークランド・アスの移転に抗議する形で2021年に設立され、わずか2年で1989年以来の地域タイトルを獲得するなど、地域コミュニティの結束を象徴する存在となった。しかし、その革新性が逆に批判を招いた。 チーム創設者のエドテック起業家、ポール・フリードマン氏は、AIを活用した実験を「データドリブンなスポーツの未来を試す」と位置づけた。2023年シーズン終盤、ファンがゲーム中の選手交代や打順を投票で決定する「ファンコントロールゲーム」を実施したが、ファンの趣味的な選択が結果を左右し、敗戦につながった。これを受け、2024年シーズンのプレーオフ出場を決めた後、AI企業「ディスティラリー」と提携。同社はOpenAIのChatGPTを、100年以上分の野球データとボールァーズの試合記録で訓練し、チームマネージャーのアーロン・マイルズ氏の戦術的判断を模倣するAIを開発した。 実際の試合では、AIはピッチングチェンジ、打順編成、代打起用など、マイルズ氏が取るはずのすべての判断を正確に再現。唯一の例外は、起用予定の正捕手が体調不良だったため、バックアップに交代した点で、マイルズ氏が介入。ゲーム終了後、マイルズ氏はAIを操作するタブレットを相手チームマネージャーに「握手」させるというユーモラスな一幕もあった。 しかし、多くのオークランドのファンはAI実験に反発。OpenAIを含むテック企業が「安全な製品」よりも「AI競争」を優先する姿勢を懸念し、「技術屋の趣味に走り、野球ファンを置き去りにした」との声がSNSで相次いだ。一部は「オークランドの魂が消えつつある」と嘆いた。 フリードマン氏は、反発を予想していなかったが、こうした議論が「未来の技術導入の前に起こるべき」だと語る。AIは「意思決定の補助ツール」として位置づけ、人間の判断力は依然として不可欠だと強調した。この実験は、技術革新とコミュニティとの関係性の難しさを浮き彫りにした。