AI搭載乳腺がんリスク予測ソフトがFDAブレイクスルー認定
米国食品医薬品局(FDA)は、人工知能(AI)を活用して乳房X線写真(マンモグラフィー)を分析し、女性の5年以内の乳がん発症リスクを個別に予測する新技術に「ブレイクスルー機器」指定を付与した。この技術は、ミズーリ州セントルイスのワシントン大学医学部の研究チームが開発し、同大学のスタートアップ企業・プログノシア社がライセンスを取得して商業化を進めている。 開発されたソフトウェア「Prognosia Breast」は、フルフィールドデジタルマンモグラフィー(2D)とデジタル乳房トモグラフィー(3D)の両方に対応し、画像と年齢に基づいて、5年後の乳がん発症リスクを「絶対リスク」として算出する。このリスクスコアは、米国における全国的な乳がん発症率と比較可能で、臨床現場で「リスク上昇」と判断された場合(5年リスク3%以上)、専門医への紹介や追加検査(MRIなど)や予防的治療(タモキシフェンなど)の選択肢を提示できる。 開発チームは、シテマンがんセンターで過去にスクリーニングを受けた数万人のマンモグラフィー画像をもとにAIを学習させ、人間の目では捉えにくい初期がんの兆候を検出できるようにした。実験結果では、従来の問診ベースのリスク評価よりも2.2倍高い精度を達成したとされる。 FDAのブレイクスルー指定は、重大な疾患の診断や治療を革新する可能性があるとして、承認プロセスを加速する制度。この技術は放射線科医の判断を補完するものであり、現行のスクリーニングプロトコルと併用される予定だ。 ワシントン大学のグレアム・A・コルドイッツ教授とジャン・シュー(ジョイ)博士が共同開発し、2024年にプログノシア社を設立。同社は大学の技術移転オフィスとバイオジェネレーター・ベンチャーズの支援を受けており、実用化に向けた基盤が整いつつある。 今後は、複数年のマンモグラフィー画像を統合してリスクを評価するバージョンの開発も計画されており、早期発見による乳がん死亡率低下の可能性が期待されている。米国では約8人に1人が生涯に乳がんにかかることから、この技術の世界的展開は、予防医療の質を大きく向上させる可能性を持つ。