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ロボットが化学反応の「ハイパースペース」を自動マッピング

4日前

米国カリフォルニア工科大学(Caltech)の研究チームが、化学反応の複雑な条件空間を自動的に探索するロボティクスシステムを開発し、Nature誌に論文を発表した。このシステムは、従来の「反応条件を1つずつ変える」アプローチをはるかに超え、複数の変数(温度、時間、触媒濃度、溶媒など)を同時に組み合わせて、何千もの反応条件を瞬時に試行できる。これを「反応ハイパースペース(hyperspace)のマッピング」と呼び、反応の成否を予測するネットワークを構築することで、最適な反応条件を高速に特定する。 従来の化学反応の研究では、一つの条件を変えて結果を観察する「単変量実験」が主流だったが、多くの条件が相互に影響し合う現実の反応環境では限界がある。今回のロボティクスシステムは、AIと自動化装置を統合し、反応条件の組み合わせを網羅的に探索。実験データを基に機械学習モデルを訓練することで、未知の条件でも反応の成否を予測可能にした。 研究チームは、特に有機合成における新規化合物の創出や触媒開発に応用できると期待している。実際、複数の反応系で従来の方法では発見できなかった高効率な反応条件を同システムが発見。たとえば、特定の芳香族化合物の合成において、反応収率を従来の2倍以上に改善する条件を自動的に特定した。 この成果は、化学研究の効率化と新素材・新薬の開発スピード向上に貢献する可能性を秘めている。研究の中心人物はCaltechの化学工学・AI統合研究グループのJia Y.氏ら。2025年9月24日付のNature誌に発表されたこの研究は、AIとロボティクスが科学の「未知の領域」を探索する新たな形を示している。

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