化学分子の性質を簡単に予測する新機械学習アプリ「ChemXploreML」が登場
化学研究者にとって重要な課題の一つである分子の性質(沸点、融点など)の予測に、機械学習(ML)を活用する新しいアプリケーションが登場した。従来の方法では、時間と設備の消耗、資金の投入が必要だったが、MLの導入によりその負担が軽減されている。しかし、高度な予測ツールはプログラミングスキルが求められ、多くの化学者にとって利用が難しいという課題があった。 これを解決するため、マサチューセッツ工科大学(MIT)の McGuire 研究室の研究者たちは、ChemXploreML という使いやすいデスクトップアプリを開発した。このアプリは、プログラミング知識がなくても利用可能で、主に分子構造を数値で表現する作業を自動化する「分子埋め込み機能」を備えている。また、すべての処理をオフラインで行えるため、研究データの秘匿性を確保できる。 研究の主執筆者であるAravindh Nivas Marimuthu氏は、「ChemXploreMLは機械学習の利用を化学分野に民主化する」と語る。同アプリは、分子の性質を正確に予測するための最新アルゴリズムを備えており、ユーザーインターフェースも直感的で使いやすい。 テストでは、有機化合物の5つの重要な性質(融点、沸点、蒸気圧、臨界温度、臨界圧力)を対象に実施され、臨界温度の予測精度は93%に達した。また、新しい分子表現法 VICGAE は、従来の方法と同程度の精度を達成しつつ、10倍速く処理できることが確認された。 研究チームは、今後の技術進化に合わせてアプリを継続的に改善していく計画で、研究者が持つ独自の課題にMLを適用できるようにする。このプロジェクトに参加したのは、McGuire教授(化学科のClass of 1943 Career Development Assistant Professor)を含む、研究チームのメンバーである。