「AIを活用した新技術『logos』、未開拓のタンパク質領域を標的化」

新しい手法で薬剤開発の新時代を切り開く可能性 IDRを標的とした新技術 2025年に『Science』誌に掲載された研究では、ノーベル化学賞受賞者のデイビッド・ベイカー博士の研究チームが、「 IDR（intrinsically disordered regions、内在的非秩序領域）」という、従来では「難治療標的」と考えられていたタンパク質に新たなアプローチ方法を開発しました。この技術は「ロゴス」と呼ばれ、AIを使用してこれらの柔軟な部位に結合する新しい分子を設計します。 現行の制約 現在の新薬探索においては、安定した構造を持つタンパク質への対策が主に行われています。しかし、これではタンパク質の50%以上を占める IDR を視野に入れることができず、多くの重要な薬物候補が見逃されています。IDR は正常な細胞機能だけでなく、癌や糖尿病、アルツハイマー病などの多くの疾患過程にも寄与していると考えられています。従来の抗体による手法は、労働力が多量に必要で、しばしば効果が乏しいです。 ロゴスの原理 ロゴスは、これらの変形が続く IDR に対して固定形を持つ结合分子ではなく、標的に合わせて自己調整可能な結合部位を持つ新しい分子を設計します。この手法により、変化するプロテインのポケットに適合させるのではなく、標的自体が結合状態に有利な形状を取り込むことが可能になります。研究チームは、39の未構造化標的に対して成功を収め、「計算デザインパイプラインにより、任意の非秩序ペプチドやタンパク質に対する結合タンパク質の設計が可能」であると報告しています。 未来的意義 この革新的なアプローチは、より多くのタンパク質が新薬の標的となり得ることを意味します。特に、IDR が大きな役割を果たす癌や神経変性疾患などへの研究が加速することが期待されています。本研究の成功は、AIと計算デザインが生物学や医療における難問を解決するうえで欠かせないツールになっていることを示しています。 業界からの反応 「この技術の発展は、難治性疾患の治療法探しに大きな進展をもたらす可能性があります。特に、 IDR が多く関与する疾患に対する有効性は高く評価されています」と、製薬業界の専門家であるマリア・サンタナ氏はコメントしています。デイビッド・ベイカー博士の研究チームは、米ワシントン大学に所属しており、計算生物学分野での先駆的な研究を続けています。