AIと光で進化する3D印刷、強度と経済性を両立
韓国科学技術院(KAIST)の金美蘇(キム・ミソ)教授らの研究チームが、光とAIを活用した新たな3Dプリンティング技術を開発し、従来の光硬化型3Dプリントの脆さという課題を解決した。この技術は、医療用インプラントや精密機械部品など、強度が求められる分野での応用が期待されている。研究は学術誌『Advanced Materials』に2025年7月に掲載された。 従来のデジタルライトプロセッシング(DLP)3Dプリンティングは、液体樹脂を光で硬化させることで高精度な形状を迅速に作成できるが、衝撃に弱く、破損しやすいという欠点があった。金教授チームは、この問題を2つの革新で克服した。第一に、動的結合を持つポリウレタンアクリレート(PUA)樹脂を開発。これにより、衝撃や振動の吸収性能が大幅に向上した。第二に、「グレースケールDLP」技術を導入。同一の樹脂を使って、光の強度を制御することで、構造内の異なる部位に最適な強度を自在に設定できる。これは、人間の骨と軟骨が異なる役割を果たすのと同様のアプローチだ。 さらに、AIアルゴリズムが構造と負荷条件を分析し、最適な強度分布を自動提案。材料開発と構造設計の連携を高度に統合し、個別最適化された強度配分が可能になった。経済性の面でも大きな進歩で、従来は複数の材料を用いる「マルチマテリアル印刷」が必要だったが、この技術では単一の材料とプロセスで同様の効果が得られる。これにより、複雑な設備や材料管理が不要となり、開発期間と設計コストが大幅に削減される。 金教授は「材料の自由度と構造設計の自由度を同時に拡大した。患者個別に合った強度・快適性を持つインプラントや、より頑丈な精密部品の製造が可能になる」と語る。今後、医療、航空宇宙、ロボット工学など、幅広い産業分野での活用が見込まれている。