アンセントがAI人材争奪戦で他社を凌ぐ理由:アモデイCEOが明かす「使命」と「信頼」の力
アントロピックのドリオ・アモデイCEOは、メタが最高で1億ドルに上る報酬を提示してAI人材を引き抜こうとしても、同社は他社に比べて大きな打撃を受けていないと語った。アモデイ氏はストライプ共同創業者のジョン・コリソン氏が主催するポッドキャスト「Cheeky Pint」で、メタのスーパーアイの研究ラボに移籍した人物のリストを挙げながらも、「私たちの規模を考慮しても、多くの人が断っている」と述べた。その上で、「他社と比べて相対的に良好な状況にある。むしろ、優位性さえあるかもしれない」と強調した。 彼によれば、アントロピックの従業員が留まる理由は、企業への信頼と株式の将来性への期待の両方が大きい。アモデイ氏は「使命への真の信念と、株価上昇の可能性への信頼が混ざり合っている」と説明。また、同社は「約束したことは必ず守る」という信頼を築き、過剰な宣伝を避けつつ、実行力を重視していると語った。 ただし、アントロピックも完全に無傷ではない。メタは、推論分野で活躍したジョエル・ポバー氏を引き抜いたほか、チャットGPTの共同開発者で元OpenAIのシエンジア・チョウ氏、およびScale AI創業者アレクサンダー・ワン氏も採用している。アモデイ氏は、一部の社員がマーク・ザッカーバーグに会うことも拒んだと明かしている。 人材動向のデータによると、アントロピックはエンジニアの採用速度が離職率の約2.68倍に達しており、OpenAI、メタ、グーグルを上回る採用ペースを維持している。アントロピックは2021年、7人の元OpenAIメンバーが共同創業。AIのリスクと恩恵の両面に配慮し、2023年には責任あるAIの成長に関する22ページの文書を公表。アモデイ氏は、AIの進展が即座に白領職の大量失業を引き起こすと予測しており、これはOpenAIのサム・アルバートンやNVIDIAのジェンセン・フアンも否定しているが、彼はその懸念を強く表明している。 アントロピックはAI安全を重視する企業として知られるが、アモデイ氏は「AI安全専門の会社ではなく、社会的価値を最優先する企業」であると強調。社内には多様な視点を持つメンバーがおり、共通するのは「公共の利益」への真摯なコミットメントだという。