PythonAIがCT血管造影で大動脈閉塞を30秒未満で検出、救急チームを上回る速さでスティロー診断を実現
急性脳梗塞の診断において、1分間に約190万個の脳細胞が死滅するという「時間は脳」の現実を踏まえ、米国・カリフォルニア大学のDr. アーメル・ハムザ・マフムード氏らの研究チームが、CTアンジオグラフィー(CTA)画像から大血管閉塞(LVO)を30秒未満で自動検出するPythonベースのAIシステムを開発した。従来の放射線科医によるCTAレビューには5〜15分かかることもあり、治療の黄金時間帯を逸するリスクが高かったが、この新システムはPACSからDICOMデータを直接読み取り、3D畳み込みニューラルネットワーク(3D CNN)でLVOを検出。その結果を、患者が検査室から戻る前にもストロークチームに即時通知する。 この開発の背景には、単なるAIモデルの構築ではなく、臨床現場における「ワークフロー遅延」の根本的課題解決への意識があった。急性脳梗塞の処置では、患者が救急外来に到着 → CTA撮影 → PACSに画像がアップロード → 放射線科医が画像をレビュー → ストロークチームに通知という流れが一般的だが、このプロセスの遅れが数分に及ぶと、脳組織の損傷が不可逆的になる。本システムは、このプロセスの遅延を解消し、AIによる検出結果をリアルタイムで医療チームにフィードバックすることで、治療開始までの時間を大幅に短縮した。 開発チームは、臨床現場の実情に即した「問題志向型」アプローチを採用。AIの精度だけでなく、システムの導入可能性、医療チームとの連携、PACSとの連携といった実用性を最優先に設計。結果として、30秒以内の検出時間と、既存の医療インフラへのスムーズな統合を実現。これは、トップレベルの脳卒中センターでも達成が難しいスピードであり、AIが医療現場の意思決定プロセスに本格的に貢献する可能性を示している。 今後の課題は、多施設での検証と、臨床ガイドラインへの統合だが、このシステムは「AIが医療の遅延を解消する」実例として、脳卒中治療の未来を変える可能性を秘めている。