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上海交通大学開発CGformer:AIが材料設計の「遠視」を実現、高熵材料探索で実証

7日前

上海交通大学の李金金教授らの研究チームが、AIを活用した新材料設計の「目覚ましい進展」を実現した。従来の材料開発は数年から数十年にわたる試行錯誤を要し、コストと時間の負担が大きかった。しかし、AIの登場により、このプロセスは「年単位」から「日単位」へと劇的に短縮される可能性が生まれている。ただ、現行のAIモデルには「近視」と呼ばれる根本的な課題——局所的な情報しか扱えない——が存在し、全体像を捉えられないため、性能予測の精度が低下するという問題があった。 李金金教授らは、この課題を解決するため、新たなAIアルゴリズム「CGformer」を開発。このアルゴリズムは、自然言語処理で高い性能を発揮するTransformerの「グローバルアテンション」機構を、結晶構造の解析に初めて導入。従来のCGCNN(Crystal Graph Convolutional Neural Network)が原子の近隣とのみ情報を交換するのに対し、CGformerはすべての原子が一瞬で他のすべての原子と直接通信できる「全息的通信ネットワーク」を構築。これにより、長距離の原子相互作用や全体的な構造特性を正確に捉えることが可能になった。 さらに、AIが結晶の物理的性質を理解できるようにするため、空間的位置情報、原子の中心性、化学結合の種類と長さといった「物理的エンコーディング」を独自に設計。これにより、構造の物理的意味をAIが正しく解釈できるようになり、精度が飛躍的に向上した。 検証の舞台として、多元素混合による高エントロピー材料(HE-NSEs)を採用。この分野は構造が極めて複雑で、実験データが限られるため、AIの能力を厳しく試すのに最適。CGformerは、14万以上の候補材料から18種の有望材料を効率的に絞り出し、そのうち6種を実験で合成。X線回折や電気伝導率測定の結果、すべてが期待通りの単相構造を示し、室温でのナトリウムイオン電導率が0.093~0.256mS/cmと、従来品を上回る性能を達成した。 この成果は、AIが「計算から実験」への完結したサイクルを可能にし、材料開発のスピードと信頼性を飛躍的に高める「加速器」としての可能性を示している。CGformerは、固態電池材料にとどまらず、熱電材料や光触媒など多様な機能材料の探索にも応用可能。中国がAIと材料科学の融合分野で、技術の「創造」から「応用」へと進化していることを象徴しており、世界の技術競争における重要な「中国のソリューション」として注目されている。

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