AIで植物の免疫受容体を改良し、病原菌への耐性を高める研究が発表
カリフォルニア大学デービス校の研究者たちは、人工知能(AI)を活用して植物の免疫システムを強化し、病原菌に対する反応力を高める取り組みを進めている。この研究は、『Nature Plants』に掲載された。植物には動物と同様に免疫システムがあり、その防御機構の一部として免疫受容体が存在する。そのうちの一つである「FLS2」という受容体は、細菌が泳ぐために使うたったのたんぱく質「フラゲリン」を認識する能力を持つが、細菌は進化を重ねてこの検出を回避する手段を取っている。研究リーダーのギッタ・コーカー教授は、「細菌は植物と戦いを続け、フラゲリンのアミノ酸配列を変化させて検出をかわす」と語る。 コーカー氏の研究チームは、自然の遺伝的変異とAI、特にタンパク質の3次元構造を予測するAlphaFoldを活用し、FLS2受容体を再設計。これにより、より多くの細菌を検出できるようにした。研究では、既知の広範な細菌を認識できる受容体を比較分析し、どのアミノ酸を変更するべきかを特定。この技術により、過去に病原菌に敗れた受容体を再活性化し、植物が感染をより正確に防げるようになった。 この方法は、トマトやジャガイモなどの主要作物が脅かされる病原菌「Ralstonia solanacearum」の対策にも応用可能。研究チームは、今後機械学習を用いてどの免疫受容体を編集すべきかを予測するツールを開発し、変更すべきアミノ酸の数を絞り込む予定。このアプローチは、他の免疫受容体の感知能力向上にも応用できる可能性がある。 研究には、カリフォルニア大学デービス校のティアンラン・リー、エステバン・ジャルキン・ボラニョス、ダニエル・M・ステvens、ハンスー・シャー、およびローレンス・ベイカー国立研究所のダニイル・M・プリゴジン氏も参加した。