NVIDIA Llama Nemotronで進化するRAG:推論力でクエリ書き換えを実現
NVIDIAのLlama Nemotronモデルを活用したリトリーブ・アクセラレーテッド生成(RAG)パイプラインの強化手法について、実践的なアプローチが紹介されている。ユーザーが曖昧な表現や暗黙の意図を含んだ質問を投げかける場合、従来のRAGシステムは正確な情報を検索できず、結果が不十分になる。たとえば「NVIDIA NeMoでの最新のモデルトレーニングアップデートについて教えて」という質問は、実際には「多言語LLMのカスタマイズ技術」に興味がある可能性があるが、その意図は明示されていない。この課題を解決する鍵となるのが「クエリリライト」である。 クエリリライトは、ユーザーの元の質問を意味的に正確で検索に適した形に変換するプロセス。特にNVIDIAのLlama Nemotron Super 49B v1モデルは、Meta Llamaアーキテクチャを基盤に、推論能力と効率性を高めたモデルであり、RAGにおけるクエリ分析・拡張に最適とされる。このモデルを用いた実験では、自然言語問題(NQ)データセットで、リライト後のクエリが検索精度を顕著に向上させた。 具体的な事例として、「低リソース言語向けLLMのトレーニングに関するセッション」という質問を扱った。元のクエリでは「low-resourced language」という表現が使われていたが、GTC 2025のセッションでは「多言語」「非英語」「Sovereign AI」などの語彙が使われており、一致しなかった。そこでQ2E(Query-to-Entity)手法を適用し、クエリを「低リソース言語における限られた訓練データを用いたLLM開発のアプローチ」と拡張。その結果、関連セッションのランクが大幅に向上し、特に「Sovereign AI」や「合成データ生成」に関するセッションが上位に表示された。 このアプローチの利点は、検索の精度と再現率の向上にある。特に、ユーザーの潜在的な意図を補完することで、検索エンジンがより包括的かつ適切な結果を提示できる。一方で、AI推論によるリソース消費や、大規模データセット処理におけるスライドウィンドウ戦略の導入といった課題も存在する。 この強化されたRAGパイプラインは、スピードよりも正確性が求められる分野(例:医療、金融、技術文書)に特に有効。NVIDIAは、NeMo RetrieverやRAGブループリントを活用し、企業向けAIエージェントの構築を支援している。