OpenAI、ビジネス向けAI評価チーム「Applied Evals」新設へ
OpenAIが新チーム「Applied Evals」の設立を発表し、AI分野の人材戦略に変化の兆しを見せている。このチームは、企業がAIを活用して複雑な業務プロセスを改善する支援を目的としており、返金処理やコード移行といった実務的なタスクに注力する。また、音声AIや複数ステップにわたる推論処理の開発も担当する。チームを率いるShyamal Anadkat氏は、この評価(Evals)がAI製品開発において「最も重要な部分」と位置づけ、技術者だけでなく、実務経験豊富な専門家を採用する方針を示した。 同チームの給与は25万5000ドルから32万5000ドルに上り、株式報酬も含まれる。初期は汎用的なエンジニアで構成され、将来的にはソフトウェア開発や人文系分野の専門家も迎える予定だ。Anadkat氏は、OpenAIが研究機関から製品開発へと進化した後、今度は「研究」と「製品開発」が密接に連携する時代が訪れると語った。具体的には、顧客のニーズに基づき、AIモデルの性能を「良い」と定義するための評価基準を共同で構築することを目指す。 この動きは、AI業界全体のトレンドを反映している。従来はAIモデルの構築・訓練に特化したエンジニアが重宝されていたが、近年は「AIを実際に役立たせる」ための専門性が求められている。London Business SchoolのMichael Jacobides教授は、評価の仕方が単なる「良し悪し」から、文脈や質問の仕方の精度へと進化していると指摘。PromptQLのCEO、Tanmai Gopal氏も、実用的なAI活用では「良い」と「悪い」の定義が非常に複雑になると強調した。 Applied Evalsは、OpenAIの消費者向けサービスとは別に、企業向けプラットフォームの顧客支援に特化。営業・ビジネスチームと連携し、モデルの課題やニーズに応じた優先順位を決定する。AIの進化は、汎用性から特定用途へのシフトが加速しており、その実現には「何が良いか」を定義する力が不可欠である。この新チームの設立は、AIが社会に根付くための「実用化」の新たなフェーズを示している。