AIデータセンターを駆動する小型原子炉開発へ Aalo Atomicsが1億ドル調達
米テキサス州オースティンを拠点とするスタートアップ、Aalo Atomicsが1億ドル(約150億円)の資金調達を達成し、AIデータセンターを駆動する小型原子力発電所の開発を加速させている。同社は、従来の大規模な原子力発電所ではなく、工場で大量生産し、データセンターの近くに設置可能な「小規模モジュール型原子炉(SMR)」の開発を進めている。主な製品は「Aalo Pod」と呼ばれ、1基で約5万戸分の電力を供給可能。CEOのマット・ロズァック氏は、AIブームと並行して同社を立ち上げ、「データセンターの電力問題に集中する必要がある」と語る。 2023年にロズァック氏とCTOのヤシール・アラファット氏が共同創業。アラファット氏はウェスティングハウスやアイダホ国立研究所で原子力技術に携わり、NC州立大学で核工学の博士号を取得。ロズァック氏はかつて人材管理ソフト会社Humiを創業し、1億ドル以上の売上を達成。彼の動機は個人的な体験にあり、カナダで石炭火力の煙害による喘息を患っていたが、核電力の拡大で空気が改善し、症状が消失したと語る。 2024年8月、米エネルギー省はAaloの実験用炉「Aalo-X」の開発を承認。アイダホ国立研究所で2026年までに完成予定。これはトランプ政権下の「核炉パイロットプログラム」の一環で、次世代原子炉の迅速な実証・導入を目指すもの。Aaloは、オクロ(Sam Altman支援)、アントアレス・ニュークリアなど10社以上が参加する同プログラムに選ばれた。 同社は今後、オースティンの4万平方フィートの工場で大量生産し、世界中のデータセンターに輸送・設置する計画。初期の顧客は、迅速な導入を優先するクラウド大手(ハイパースケーラー)を想定。価格目標は3セント/kWhまで引き下げるが、現在は13セント/kWh(米国平均、2025年5月時点)より高め。新資金は、従業員を60人から1年以内に120人に増強し、エンジニアと製造人材の採用に充てる。 投資家にはValor Equity Partnersが主導。同社はElon MuskのxAIやCrusoeなどAIインフラ関連企業にも出資しており、データセンター開発とのネットワークを強化。Aaloは、AIのエネルギー需要という世界的な課題に対して、核エネルギーという「最も誤解されている技術」を再評価する挑戦を続けている。